Tsurezurekun’s blog

アクティブな時間を大切に、カナダから旅行や身近な生活便りを発信しています。

カナダライフ  夏の日にオンタリオ湖の上で

夏の日に、オンタリオ湖畔から水平線の方へ目をやると、きらきら輝く波の向こうに白い帆を掲げたヨットが何艘も出ているのを見かけたことがありませんか。まさに、オンタリオ湖の夏の風景には欠かせない風物だと言えます。

 

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オンタリオ湖岸

気持ちよさそうに行き交うヨットをみながら、あんなふうに帆をあげた船に乗って湖上をスイスイと風をきって走るのは、さぞすがすがしい心地にさせられるだろうな、いつかはやってみたいなとずっと思っていたものです。

 

普通のボートクルーズとは、また違った趣があるに違いないと夏が来るたびに、あちこちにつながれているそのヨットの数の多さにも、思わずため息をついたものでした。

 

ムスコカやジョージアン・ベイで、友人のセール・ボートに何度か乗せてもらったことはあっても、ただじっと座って周りの景色を眺めているだけで、セール・ボートの作動にかんしては、何をどのように操作すればよいのか皆目見当もつかず、その基礎だけでも、習ってみたいなという気持ちはあったものの、時間的な余裕もなく気持ちだけでが、ずっとそのままになっていたのです。

 

ところが、冬のスキークラブの行事の締めくくりに、「夏に出来る活動を紹介する」という日があって、ちょっと覗きに行ったのが、「実際にやってみようじゃないの。」と案外すんなりと思ったきっかけでした。サイクリングやテニスやその他いくつも選択の余地はあったものの、この年だからこそ、何か目新しいものに取り組んでみたいというのがその気持ちの発端だったようです。

 

実際、少しだらけ気味な日常の仕事と全く異なる世界を自分の中に持つというのは、緊張感が高まり、気持ちが浮き立つメリットがあるし、未知の分野にチャレンジするというその気持ちだけでも、心が奮い立つというか、まだまだ若いんだと、自分で暗示をかけるようなところもあって、それでいて、本当に力が湧いて、行動できるようになるから不思議なものです。

 

セーリングと言うと、お金がすごくかかりそうだし、体力的にも大変そうだと言う印象があったのですが、セーリングは、意外とだれでも楽しめる魅力的なスポーツです。もちろん、自分でヨットを所有するとなると、確かにかなりな金額がはるし、イニシャル・コストはもちろん、維持費や修理代その他諸々にかかる経費がばかにならず、ほんとうに、半端なものではないのは、確かです。

 

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帆をあげてすいすいと行くセールボート

 

ふところの気になる我が身で、「キール・ボート入門」のコースを取ることにしたのは、コースを取ると、クラブの初年度の入門費やメンバー費が一緒になっていて、クラスを終了すると、ヨットを所有していなくても、クルー・メンバーとして、メンバー所有のヨットに乗る機会がその後も与えられるというものだったからです。それに、まず最初は、クラブが提供するコースを取り、その後経験をつみ、いずれは、スキッパーとしての証書を取って、クラブ所有の小型のヨットも借りることが出来るというのも、一過性のものではなく、とても魅力的なプログラム構成だと思えたからです。

 

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クルーメンバー

ヨットには沢山の種類があり、その楽しみ方や必要な技術も様々です。大まかに言って、船室のあるクルーザータイプと、エンジンさえもない、二人乗りぐらいの小型のディンギータイプがあります。ディンギーの楽しさは、敏感に反応する舵を操り水の上を走行することですし、ヨットの原点だと言えます。エンジンも燃料も使わず、風の力で走ることが出来るヨット、素朴だけどそれだけにまた奥が深く、力強さと優しさを兼ね備えた、夢のある乗り物だと言えます。

 

ただ、転覆した時にそなえて、ボートを元にもどして、水の中から腕力を駆使して這い上がる練習をせねばならず、水にぬれた重たい身体を2本の腕で引き上げるのは、鉄棒以上に大変で、確かに、体力や腕力は、大事であると実感した次第です。

 

基本的なコースでは、一人乗りヨットから大型クルーザーまでのヨットに共通する大切なスキルを学びます。クルージングがどんなものか知りたい人から、自分の力で操船できるようになりたい人まで、基礎知識から始めて、徐々に、もっと専門的な技術を学ぶことが出来るわけです。

 

ボートの名称や理論と技術が身体にしみ込むようになるまでには、何年もの経験が必要で、自然の上に浮かぶ船のことだから、経験者と言えどもなかなかあなどれないし、危険が伴うことは言うまでもないことです。

 

また、ゆったり湖をクルージングするのと速さを競うレースに参加するのとでは、全く別のものと捉えた方が賢明なようです。乗組員の姿勢自体が違うし、慣れてなくて乗せてもらうと自分が全くじゃまな存在であることを身につまされるような状況にもしばし遭遇します。

 

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風がとても気持ちの良い日

スキッパーとして、安全なセーリングが出来る航海術を取得し、家族や友人達と、小型のクルージングヨットで出かけて、風を肌で感じ、波の音やきらめきを感じ、爽快さを味合う、そういった余裕が出て来るのが、理想です。

 

夜空に煌々と浮かぶスカイドームやCNタワー、それらを囲む摩天楼、そのまた廻りをコンドが埋め尽くし、それぞれの窓から放たれる灯りの数々がきらきらときらめく。本当に、見違えるようになったトロントの夜景を音もなくすべるように進むセールボートの舵をとりながら眺められたこの夏の体験は、どきどきした気持ちの高鳴りの名残りとともに、きっと長い間心に残ると思います。 

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夕日のオンタリオ湖